考え中。

現在は、椋崎という名前で活動中。

短編

フェイク・フェイク・ワンダーランド

青年が牛乳パックを二つ抱えて、レジに持って行く。 会計を手際良く終わらせ、レジ袋を持って店を出て行った。 交差点の前で信号が変わるのを待っていると、同じく信号待ちをしている学生達の立ち話が聞こえてきた。「おい、聞いたか? 魔導機関が人魚を見付…

さざなみレイルロード

窓辺から暖かな木漏れ日が差している。 小鳥の囀りと、寄せては返す波の音が聞こえてくる。朝が、彼女を迎えに来たのだ。 眠気まぶたを擦りながら、ゆっくりと上半身を起こし、伸びをする。欠伸混じりに間抜けな声を漏らしながら、寝癖のついた頭髪を掻いた…

月の宴

その村は、北北東の端、よく雪の降る地域に存在した。 森と山々に囲まれ、あまり人の近寄らない場所に築かれたゆえ、独自の宗教観と文化を持ち、それは何世紀にも渡って受け継がれて行った。 例えば、月は神の寝顔であると彼らは信じる。 それから、太陽は笑…

岩田紗路のある考察

家達 和尊は時代錯誤のしがない私立探偵である。 その日々はポスター貼り、町内会の資料作り、回覧板の作成、町内清掃等々の雑用に費やされ、刺激的な事件の調査など縁遠い存在であった。 新しく立てられた古本屋のテナントを訪れるまでは――。 昨今の蛇目市…

火花

傷だらけの少女を抱えた少年が、今にも泣きそうな顔で縋る様に謝罪していた。 「どうか、どうかお許しください。お嬢様――わたしは取り返しの付かないことを!」 「良いの、良いのよ。ねえ、ロミア」 震える手で少女が少年の頬を撫でる。 もはや言葉ですらな…