三木 崇彦には家庭教師がいた。 小学校の折、不登校になって塞ぎ込みはじめた息子を心配し、勉学に勤しませる為に両親が雇った大学生の男は、とにかく破天荒であった。 植物図鑑を片手に現れた役者の様な端正な顔立ちの彼は、歓迎パーティの折に出されたワイ…
十三歳の少年、伊丹 圭にとって三木 崇彦という存在は鮮烈であった。 彼に対する思いは複雑に入り混じっている。憧憬、友情――あるいは、嫉妬。 新入生代表として答辞を読む三木に伊丹が感じたのは、その猫背気味の背に滲む、弱々しさだった。それもその通り…
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